夜戦! その黒っぽい装束とともに、格別の魅力を放つこの領域の機体は、各国それぞれに独特の興趣をみせるのですが、今回はトリノ冬季五輪@ぼんじょるのイタリアの勢いもあって?フィアットで。(^^; そもそもイタリアの場合、夜間空中戦という状況が事前にほとんど全く想定されていなかったようで(汗)、いざ夜間に爆撃機等が侵入してくるとなるとさあたいへん。泥縄的にとにかく仕立てられたのが本機の仕様。両下翼下面にサーチライトをぶらさげて、ツヤのある黒をまとった複葉機最高峰、フィアットCR.42ファルコ。しかしながら、電探の誘導もなく夜空に敵機を求めて飛び回るその方式では、果たして確実な接敵と攻撃が行いえたかどうか・・・ですけれども。

ところがどっこい、ちゃ〜んと戦果をあげてる操縦士がいるんですな。今回の夜鷹を操ったトルキオ中尉(最終5機)は、おそらくこの機体でウェリントン爆撃機をおとしてる模様(RAF Bomber Command等の喪失記録までは確認してません〜。すみませぬ)。ところもまさにパレルモ上空。かつて歴史の上ではイスラムの支配下にはいった時代もあったというその街、その島の上空で、三日月の部隊マークを描いた機体にはアッラーの御加護もあったでしょうか、というところ。その部隊マーク、機番も含めて赤が基調との説もありますが、今回は青の説で。実機写真では機体色もやや明るめに写ってて撮影条件がイマイチ「?」ですが、三角部など赤というほどには暗くない感じ。

上の↑画像で添えてあるカクテルは「Kiss in the Dark」。並べたビンでもおわかりのごとく、ドライベルモットとジン、そしてチェリーリキュールを同量ずつというのが標準レシピ。チェリーリキュールが実に華のある香りとさらっとした甘さを感じさせつつ、その背景はマテニもどきですから決して弱いものでもなし、「お」という感じがまさに闇夜のキッス。実に夜戦向きのカクテル名ですね。でもそちら方面趣味のかたによれば、名称がちょいと直裁で注文しにくい(やや気恥ずかしい?)のがねぇ、とかなんとか。(^^;

↑上翼中央、サーチライト用の発電機のプロペラが廻ってないぞという御指摘は御勘弁也。m(_ _;)m  翼付け根のインテイクは開口の要あり。排気管の取り付けは固定部の目安もなくって写真みながら目分量(汗)。ライトユニットはひょっとすると前面に流線型の透明カバーがつくのかも。エンジンカウルの凸部は型抜きの関係で一部形状が不整のものあり。実機写真にみる現物より幾分強調されてる印象もあるので、達人であれば涙滴型のそれを全部作り直すという選択肢もありましょうなぁ。ここは美しく繊細なレジン一発抜きがあっても良いかも。そんな部分に限って、プラ材分割の謎(笑)。そうそう、そのカウル先端への絞り込みですが、実機にくらべて曲線基調がやや強すぎの気配もあります。感覚的な部分なので個人の解釈によるところ。わたしゃ少しだけ削りました。なにしろ最高性能の複葉機ゆえ、そこかしこがそう鈍いラインでは無いんですね。結構するどいファルコ嬢。

1/48のCR.42キットは簡易インジェクションであるこのクラシックエアフレームズ社(以下クラエア)製のものと、より新しいイタレリ社製のものがありますが、全体形状自体は両者ともとてもよく実機を机上に再現していて吉。ただし、羽布部リブ表現などでイタレリのはクセがありまして、見方によってはそれがやや粗いんですね。クラエアのはとても上品でしっくりくる表現。さらに分割無しの一発抜きになってる上翼がぞくぞくするくらい絶品。ヒジョーに「翼」しています。でもクラエアは簡易ゆえもあり、翼間支柱の位置決めなど、現場合わせの要素がかなりあること、さらに下翼付け根前縁左右に開口するオイルクーラーのインテイクと、同じく下翼付け根後縁下面に開くそのエアアウトレット(カバー付)が全く無視されているので工作の必要があります(イタレリはちゃんと開口、カバー部品もあり)。そのあたりを考慮されたうえ、実際にキットを見比べて入手の可否を決められるがよろしいでしょう。個人的感想では、羽布部の粗めな表現が我慢できるならイタレリがらくちんでストレスも無し、そこがダメなら必然的にクラエアかと(クラエアで足りない部分やディテール追加は、こんな私でも追加工作できる程度)。ちなみに「ハイパースケール」でのレビューでは、両キットを良いとこどりすれば究極のファルコが!とかなんとか。(^◇^;)   あ、そうだ、クラエア製はコックピット部もエッチングやレジンの部品が付属しますが、それら含めて位置関係/部品配置がわかりにくい説明書。参考書なりネット上での情報なりが必要かと思います。でもって操縦席付近はベースが銀色ですね、たぶん。はやまって緑灰系に塗っちゃったですよ、まったく。orz  クラエアの説明書といえば、胴体と上翼を結ぶ支柱の上下が逆に描かれてる部分あり、ご用心(汗)。

あと、翼や支柱、脚に至るまでクラエア製だと角度が全部、製作者に任せられますのでご承知おきを。(^^;  取り付け参考図は組説書にありますし、あとは簡易な治具など自作して用いるのが正しい姿勢ではありましょう。←やらなかったので翼の取り付けでいきなり歪んだヤツ

今回使用したのは夜間戦闘機=CN=Caccia Notturna仕様で出てるクラエア製。イタレリ製は、なぜかまずドイツ軍仕様(防炎排気管、爆弾架付の夜間騒擾機タイプ)のが出てますが、エンジンカウル下につく気化器インテイク部がフィルター付タイプしか設定されてないので、イタリア空軍使用機ではより一般的なフィルター無しのタイプにするには、ひと手間必要。おそらく、すぐにイタリア空軍機仕様のキットが箱替え+部品追加/差し替えで出るだろうと思うんですがね。勢いで今48の穴になってるフィアットの55まで出してくれんかなぁ。

↑ディスプレイ用プレートの一案に乗せてみるの図。月をテーマにするのなら、タロットカードの「moon」@不安の表象を持ってきてもヨロシですが、今回のにはちょいと似合わないでしょうか。う〜ん、それにしても色味が画像ではうまく出せませんな。(^^;  今回の塗りでは、単に黒く塗るんじゃなくって、普通の黒をベースにメタリックな黒、いわゆるカウリング色(茄子紺的な日本機用色)、ブルーエンジェルス用の青を適宜使って(全部クレオス)、金属外皮部と羽布部の違いやハイライト部に青い月の光のニュアンス(笑)を出そうという試みだったんですがね。机上ではまずまず青い気配の深い色が出てるんですが、画像だとぜーんぜんわからんですな。ヽ(゚∀。;)ノ

そんなふうなので、背景など条件をかえて撮ってみたのが↓これ。リブ付近やパネルのエッジ部やらのハイライトに、青味がスッと浮いてます?

キット付属のデカールは良質ですが、青の色調がかなり淡くて、単体でみてるとなかなか良くても、まっ黒に近い機体に貼るとどうも調子がくるっちゃってそこだけ浮くんですね。だもんでカルペナやらタウロやらスカイやら、別売りデカールから切り貼りしてさらにタッチアップでバランスなど。もうそれなら最初から塗ったほうが早いですな。わははは(涙)。

部隊マークは三日月夜に飛び道具を抱えてたたずむミミズクのシルエット。背景の三角が無い場合は、黒いシルエット部が(機体色と区別できなくなるので)別の色調(茶系?)に。

*部隊マークのシルエットは一応「耳羽」/「羽角」が描いてあるのでミミズクと解釈しました。でも英語だとフクロウだろうがミミズクだろうが「owl」だし、イタリア語でも一緒だろうよと思ったら、どっこいそうは問屋がおろし大根。「civetta」が一般的なフクロウ系を指すんですが、もひとつ「gufo」ってのがあって、これがミミズクだとの話も。ただ、gufoには付き合いの悪い偏屈な人物を指す、やや蔑称的意味合いもあるようでビミョーなところ。377隊のマークでは、すこーし目付が陰険な?表情でもあり、どっちかってぇとgufoでしょうか。この黒い機体のイメージにはよく合ってますな。

治具も用いず目分量でやった結果、歪み矯正の辻褄合わせでへろへろよれよれになっちゃった支柱、胴体から上翼へのそれのうち計4本は、エバーグリーン製のプラ材を加工したので置き換えましたさ(涙)というのも今は昔の懐かしい思い出。(^^;  自分のドジが原因ですが、それにしても苦労したんだよー(泣)。

世の中は便利になったもので、パソコン上で天文系のソフト(私の場合は古いマッキントッシュ用の「Expert Astronomer」英語版)を使って年月日に時刻、観察地点さえ入力してやれば、なんと、この機が活躍した当時、トルキオ中尉がウェリントンを追ったまさにその1943年2月21日夜におけるイタリア方面の星空がわかっちゃうんですね。それによれば、21日〜22日への夜中は、満月を幾分過ぎて欠けはじめた月が中天に、それでもまだまだ丸く大きいままで輝いてたはず。ちょうど獅子座と乙女座の間ですな。当日の雲量まではわかりませんが、雲さえなければたぶん夜空は月光に満たされてずいぶん明るかったでしょう。しずしずとひそかに忍んでくる夜間爆撃機、煌々と明るい月に照らされた青い夜のシチリア島上空、その背後にじわじわ迫るイタリア夜鷹が一羽。やがて一瞬の光芒が走り、火を吹くSafat .50の銃口という状況。開放式コックピットで全身に月光を浴びての夜間戦闘飛行は、どんなものだったでしょうねぇ。

↓1943年2月21日〜22日夜半、イタリア方面の夜空(シチリア島の設定が無いので、ざっと近似的にローマで空を見上げた天球図。図の中央付近が天頂、下が南)。まもなく春だと告げる星座群のその中で、南天高く東寄りに丸い大きな月。西寄りの空には明るい木星と土星も輝いていた模様。

さて、タイトルに書いた「Kiss inthe Dark」は既にこじつけっぷりを了解して?いただけたと思いますが、じゃあ「Once in a Blue Moon」ってなに?と。これは英語の慣用表現のひとつで、「めったに〜ない」という使い方らしく。たとえば

He has a very nice car, but he drives once in a blue moon.」(彼はとても素敵な車を持っている、けれど滅多に運転しない)

*参照サイト;http://humanities.byu.edu/elc/student/idioms/idiomsmain.html

なんでそうなるかっちゅーとですね、満月はだいたい1ヶ月に1度なんですが、暦の関係でまれに1ヶ月に2度の満月があると。その2度目の満月を「Blue Moon」と称ぶんですね。だもんで、上のごとく「めったに〜ない」の意味をあらわすと。ま、たしかにおっとりがたな的な応急夜戦システムでは、戦果をあげられる機会もまさに「Once in a blue moon」だったんじゃないかしら、というお話でした。(^◇^;)  残念ながら、1943年2月には2度の満月はなかったようですが。←あったらネタにピッタリ偶然すぎて怖いわい

国籍マークは下翼下面のみ。下翼付け根下面の後縁にカバー付のエアアウトレットを追加。機体塗装がこれなので、最近はやりの「黒い瞬間接着剤」がたいへん重宝でした。夜間用の防眩排気管(長い)のじゃないのは、本機がライトユニットのテストに関わってたから? それとも防眩仕様の長い管ができてくる以前の機体? よくわかりませんでした。m(_ _)m  上翼下の支柱に円形バックミラーを装備してる機体もあります。ピトー管は例の両側にある「十手」変形みたいなのや、素直な棒状のなどバリエーションあり、個機は要確認。どっちにしてもクラエアなら自作しなきゃですが。

下面みてて、「空薬莢排出口が無いわけだが」と思ったら、ちゃんと薬莢の回収箱が機内に。最近のヒコーキ映画で流行りの「機銃撃ったら空薬莢がキラキラしつつバラバラと落下」って絵は、本機の場合は無しですねぇ。でもなあ、一度ぶっぱなしたらその後は、機動のたびに機首から金属音がザラザラガラガラカランカラン響いてくるってのもなんだかなぁ。(^^;

今回試してみた天文ソフトの類いを用いれば、例えばダムバスターズが飛んだその晩、さてほんとうに「The moon was full」だったのか、だとすれば侵入時は空のどこに月が輝いてたのか、あるいは1941年12月のその早朝、ハワイ付近の空で明星は輝いていたのかとか、いろいろ試してみることができますねぇ。椰子の葉陰に十字星♪の確認ももちろんのこと。

そんなことで、遠回りもいっぱいしつつの青い月夜のお話はこれにて。まいどお粗末さまでした。m(_ _)m

<参考文献>

1)第二次大戦のイタリア空軍エース(オスプレイ・ミリタリーシリーズ 世界の戦闘機エース15);'01、大日本絵画社刊
現時点でWW2期のイタリア戦闘機を作るのなら、まず必須の一冊でしょうなぁ。人名などは一部だけじゃなく出来るかぎり原語のつづりも載せていただけると嬉しいんですが、ま、そこはそれ。元本の記述に由来するであろう一部の齟齬も、気になるかどうかは読者次第。(^^;

2)FIAT CR 42 ALI D'ITALIA 1;'98、La Bancarella Aeronautica 社(伊トリノ)刊
42やるなら持ってて損のない一冊。伊語と英語並記で実機写真と概説、48と72の図面あり、側面透視図と一部構造図、カラー側面図等あり。

3)FIAT CR 42 ALI E COLORI 1;'99、La Bancarella Aeronautica 社(伊トリノ)刊
上にあげた本と同じ出版元からの類似体裁で、カラー側面図特集みたいな仕立て。これも伊語と英語並記。

4)Fiat CR 32 / CR 42 in action;'00、squadron / signal 社刊
スコードロンの航空機インアクション、そのNo.172。32と合わせて一冊のフィアット複葉機本。仕立てはいつものインアクション。

*他に、ペガサスさんとmayonakaさんから見せていただいた絶版イタリア機写真集も強力な味方。実は今回の機体、実機写真もその中に(ただし胴体の一部のみ)。毎度ながら、御礼〜。

いや〜、イタリア機ってホントにいいもんですね。42を済ませると今度は32も作りたくなる罠。カッコイイんですもん。る♪ ←まったく懲りてない

(2006年3月2日初出)



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