古いものや過ぎ去ったものはさっさと脱ぎ捨ててしまう傾向のままある某東洋の島国と対照的に、地震もなく石造りの家に長〜く住む人々の王国は、その時の流れのゆったりしたローブやマントを好んでまといますな。今回はその線で。な〜に、蛇の目!と思ってページをめくったWarPaintシリーズ(←最近お気に入りのネタ本<笑)で、「これぞ!」という白い垂直尾翼の英国幽霊機をみつけたからってのが最たる動機ざんす。(^^; 

機体自体は米国マクドネルダグラス社の送りだした他用途戦闘機の金字塔、F-4ファントム。これに英国独自の工夫と改良を加えたF-4M(FGR.2)でありますね。で、マーキングはMt. Pleasant基地の第1435飛行小隊機。すなわち、フォークランド諸島の防衛部隊所属機なわけで。

御存知のごとく、英海軍最後の(今のところ)通常型空母「Arkroyal」の退役を待っていたかのようなタイミングで1982年に起ったフォークランド紛争。諸島の帰属を巡っての紛糾は、他国の話ではないような気もしますが、それはさておき(汗)。

フォークランドにおける英軍の戦い方は、「やれるか、やれないか。それが問題だ」式ではなく、「この攻撃をやる。やるにはどうすればよいかね?」的な、ヒジョーに意志の強い作戦方針だった印象を受けますな。(私見では、あの艦を沈められた時点で本気になったかなと思うんですがね) 想像を超えるよーな空中給油支援体制を組んででも、ヴァルカン爆撃機で行っちゃう。あるいは母艦が無いならコンテナ船にハリアー積んででも送りだす。延々連続航行かけた原潜が、きっちり戦果を揚げてみせる。いずれフォークランドのネタは、ここでも別項で必ずやると思うのでここらで止めますが(汗)、とにかくあのお国に本気でいくさをやらせたら強いですな、やはり。

で、紛争の後は奪い返した島々を守ろうと。そこで本国から強力な防空戦闘機材としてのファントム(実は型落ちになりつつあり<汗)が送り込まれることに。その辺りもですね、1小隊4機ばかりを出すのに本国の防空態勢に穴があくからと米国のJ型を拝借して補填したり、あるいは乗員等も各飛行隊から交代で送りこむなどやりくり工夫がされたよーです。その時、誰かが思いだしたんですな、きっと。「オンボロ数機だけで島を守れと? ふむ、それは前にも経験がある。中尉、その本をとってくれたまえ。そう、そのマルタ島の──」

1940年初夏、イタリアが宣戦布告した頃、目と鼻の先であるマルタ島には空母「Glorious」から下ろされたわずかばかりの複葉戦闘機・シーグラジエーターしかなかったと。連日のように襲い来るレジアアエロノーティカ(伊空軍)のサボイア爆撃機やフィアット戦闘機の大軍を迎え撃ったのは、わずか数機の複葉機。そのうちの3機(基督教的三位一体=3が大事)には「Faith(誠実)」 「Charity (仁愛)」「Hope(希望)」と名前がつけられた由。1ヶ月ほど後にハリケーンが増援として送り込まれるまで、この果敢なHal Far基地飛行小隊はマルタを守りきって伝説になったんですな。あっぱれ。(そういえばフォークランドでの英原潜コンカラーの戦果も、マルタにおけるウォンクリン艦長指揮HMS Upholderの活躍を彷彿とさせるものがありますが)

──って、前置き長すぎ。_(_ _;)_

以下、本文(?)は藍色文字、模型関連は青文字で。読みにくくてすんませんです。

キャノピーつける前の塗装状況(はいぶりっど〜)。コーションデータをさらに貼り、白がめだちすぎるのでグレーをかぶせたりするのはこの後。デカールはモデルデカールとエクストラデカール、それに加えてキット付属の細々。ちなみにキットの淡いラウンデルは、寄り目になっててアカンのでした。(^^;

で、マーキングの由来。要するに少数で島をまもった先輩達にちなみ、自分たちのファントムにもその心意気を込めようではないか、そうかそれならマルタ十字がよかろうと。かくして赤いクロスを描かれた英国幽霊、それぞれに再び「Faith」「Charity」「Hope」、そして「Desperation」の名を書き込まれてフォークランドの空に。これはしかし、英国流のかなりイケズなメッセージでもありますわな。「来るなら来てみな。やったろうじゃないの。我々はかつてマルタを守り抜いた。どうよ、やるかね? ふふん」

さらに付け加えれば、部隊ナンバーの「1435」、これもマルタにいた中隊のNo.を数十年ぶりに復活させたヤツの模様。まったく、やってくれます。(^^;

最初キャノピー閉じたですよ。ところが後端に合の悪さがあり、また機首へのラインがイマイチだったので開放に変更。ミラーと作動棹は追加工作。前席と後席の間の固定部には、たぶん左舷にペリスコープがついてますんでこれも追加。コックピット内なんて、キャノピー閉のつもりでやってましたから、何もしてません(汗)。

この白い垂直尾翼に赤いマルタ十字、これすなわち今回のアルファでありオメガでありまするよ。あとはどーでもよろしい。←こらこらこら

さて、問題はこの白地に赤いクロス。ほら、十字軍のイメージでしょ? まあそのとおりなんですが。でもマルタ島にいたのは巡礼者に医療を提供したのがはじまりな、「聖ヨハネ騎士団」なんですと。ここのクロスはですね、形はこうなんですけど「黒地に白十字」がデフォルトなんですね。では「白地に赤十字」は何?といえば、テンプル(聖堂)騎士団の意匠。モデルデカールの解説でも垂直尾翼を「サテンホワイト」と記述しとりますが、白いマントに赤いクロス(クロスも微妙に違う形)ってのがテンプル騎士のお姿で。両騎士団ともに当初は巡礼者を守って活躍したんですけれど、テンプル騎士団のほうはやがて「異端ナリ」との指摘を受けて魔女裁判的に手酷い弾圧、排除を受けます。そのテンプル騎士団の財産等をヨハネ騎士団が受け継いだりしてますし、だいたい当時は教皇に都合の悪い団体やひとは皆「異端」にされちゃっただろうと思うんで話が複雑なんですが、あまりそこらをヒコーキサイトで追いかけてもねえ(笑)。ただ、テンプル騎士団は、「インディー・ジョーンズ 最後の聖戦」でペトラ遺跡の奥深く聖杯を守護してたあの老騎士のイメージが強くあるんですよね。

聖杯と来れば、それを探し求めたアーサー王と円卓の騎士の伝説でしょ。ほうら英国に帰ってきた(笑)。なんたってフォークランドに参戦してた英国の揚陸艦にも、円卓の騎士達の名前がついてたんですからネ、たいへんなんすよ奥さん。←誰?

そんなことで、マルタのヨハネ・クロスの形に聖杯@アーサー王伝説をからめてテンプル騎士団の意匠を、あるいはさらにイングランド旗の「白地に赤十字」なども重ねたのがこの幽霊尾翼かな、とも。「英国」と「マルタ島」に「騎士」「守護者」等を多重にかぶせた意志表明の印かしら、などと妄想する次第。もちろん、単に「な〜に、雰囲気で塗っただけさ」の可能性も大ですがネ。ヽ(゚∀。;)ノ

*このマーキングを実機に塗られた英空軍の関係者の方々、もしここを読んでたら事情を教えてくださ〜い。←読んでるわけ無いだろう ←日本語だし。(^^;

幽霊の幽霊たる証の部分@コテコテ塗り。スペイの轟音とリヒートの炎を思い浮かべて吉。暮れなずむ藍色の空に青白くのびる幽霊の航跡。嗚呼。下面のエアブレーキ内部はひょっとすると赤かも? 英国幽霊、細部は例えば主輪ホイールが白だったり黒だったり、機体によって違うようです。ご用心。さらに下面の補助インテイクは、もう少し前方に開くのが正しい位置のようです。直してもそうそう目立たないのでそのまんま。(^^;  内舷パイロンの後端両側には、80年代後半くらいから?チャフ/フレアのディスペンサーが付きますから、これはプラ材を貼付けておきました。水平(?)尾翼はスペイ搭載型の場合、米軍ファントムより下半角がやや浅いようです。接着部を少し削って、気持ち角度が浅くなるようにして吉。「スペイの強力な噴射をかわしてるんだゼい」ってかしら。(^^;

「フォークランド諸島の幽霊はマルタ島の夢をみるか?」の図。側面、なんか鼻先ラインが気になりませんか?(汗) 気のせい? ←不幸な視点  機首のマークは「羊さんと船、波」を意匠にしたフォークランド部隊印。せっかく防衛飛行隊なんで、キット付属のマトラロケットポッドは使わずにサイドワインダーを調達。

夢をみた幽霊はマルタ島バレッタの印象で飾ると吉? 「黒地に白十字」のマーキングも良さそうですが、やはり白を効果的に使うとすっきりした印象になりますな、ミリタリイ関連全て。

もう一案、明るいグレーと深い茶色のコントラストに趣味性を求めるの図。これも実は白が効く配色。

時折使う「逆光描画」フィルタ。蛍光灯(汗)照明が写りこんでたりする時にかぶせて反射にしちゃうという。(^^; このページトップでは、ランディングライトをこれで光ってるよーにみせてますな。詐欺ざんす(笑)。レドーム、上面色のバーリーグレーと多少異る色調の機体も多いので、気持ちだけハイブリッド@筆でヘンプを乗せてみました。胴体インテイク内はいやな段差が奥にみえるんですが、写ってないや。よかった。ヽ(゚∀。)ノ  灰色の英国ファントム、この角度だと航空ファン誌に以前載った、瀬尾さん撮影のあの写真が思いだされます。

あ、垂直尾翼の白がハレーション起すので撮りにくいのか(汗)。 ←気付くの遅すぎ

英国でも活躍を続けたアメリカ生まれの幽霊、92年の秋にはあとをTornadoにゆずることに。哀しいかな、ついにフォークランドの4機は英本国への帰還も果たせずに遠く大西洋の果てでスクラップにされることになります。しかしその時、あのマルタ島におけるグラジエーターの1機、Faith号と同じような運命が小隊の1機に。今もMt. Pleasant基地には、その1機のマルタ十字幽霊機が、保存機として西の空をにらんでいる筈です。マルタで、そしてフォークランドで、それぞれ1機ずつの元英軍機はなおも「我らこの島を守りし」と身をもって伝えております。ああアルゼンチンさん、相手が悪うございましたな(涙)。

マルタで、そしてフォークランドで、空に海に地上についえた幾多の人々に黙祷して、今回は終了であります。「聖戦」とか「神の名において」とか、やめましょうや、もうね。


<参考文献> 

(2004年6月28日初出)


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