晴嵐。先のP-40Kを7月末に済ませて、それから機種選定して正味10日程で「夏の日の丸」企画をば。めずらしく間に合いました(汗)。

この機体、戦後に進駐米軍側で撮られたカラー写真がありまして、エセルさんのPacific war eaglesにそれが大判で。全面橙色の機体をあとから上側面に濃緑系かけたその姿、写真におさまった状況以前の「生きてる姿」をやろうじゃないか、と。本機はそのカラー含めて複数の写真があり、類推するに横須賀@空技廠方面へいったん納められたものが、再度愛知航空機の永徳工場へ戻った(修理/調整?)経過を持ってるような気配。垂直尾翼は無い姿なので、一度記入された機番が消されたような表現にしてみたり。あとは、橙色に上塗りされた濃緑の風情、この2色でもって「夏」を机上にという目論見ですな。

ついでに季節物を配して、その橙色からの拡がりを期待するの心。←付録参照。

本機種は既に皆さま御存知のごとく、いわゆる潜水空母=イ-400級等に積まれて当初はパナマ運河攻撃に、そして後にウルシー環礁攻撃にと企図されつつも終戦で果たせずという次第。特殊攻撃機となってますが、実際にパナマ攻撃の当初案では、魚雷を積んで運河の閘門を破壊しようとの作戦計画だったようで、その意味では本来の「攻撃機」なわけですね。もっとも魚雷発射試験は南山でのみ行われた模様(正規の作戦では晴嵐が八十番や魚雷を積むときはフロート無しの設定ゆえ、でしょうか)。そんなことで、「ダムバスターズ」の近親にもなりそうだった機体、いずれにせよ、良くも悪くも「日本帝國海軍」の一面を象徴するような機体と構想ではありましょう(哀)。

機体そのものは「箱からまんま」@ストレート。フラップも指定通り下げ、昇降舵のみは下げ加工して、幾分の虚脱感を表現(のつもり)。機首上面先端は、エンジンカバーからのつながりがあまりにスムーズすぎる気がして(思い込み)、Bf-109F以降みたいな、ほんの少し不連続さを出すべく作業。ほとんど効果無し。(^^;  

キャノピー上のアンテナ柱は、後傾してるんじゃなく基部キャノピーに対して垂直なだけかと思うんですがね。スミソニアンの機体は後席左舷側に別の短い支柱があるような(この第2支柱?がまた問題で、風防前にあるようにみえる機体も・・・)。でも晴嵐は生産数(全部で28機とも)からいっても、ほとんど1機1機ごとに細部に違いのある可能性もあって、そこらはあまり厳密に追及しないのが精神的には吉かも、ですな。機内の塗りも同じく、キット指定はRLMグラウ系ながら、スミソニアンのはもっと日本機っぽいグリーン系。

胴体側面には主翼を畳んだ時の固定孔等もモールドされてますが、貫通してるのは「?」だったりで適宜処理も必要かと愚考。同様に、引き込み式ステップ部のモールドが凹ですが、フロート支柱のそれと同じく胴体ステップも収納してたら凹じゃなく平坦になるんでないの?と。(^^; わたしゃ左舷2、右舷1の胴体ステップも出しましたんで、そのまま凹で。

主翼、フラップを下げると翼との間にかなり隙間が(汗)。実機でもそれなりの隙間はあるので、そのまま。そのフラップ部周辺の翼面には、例によって「踏んだらアカンぜよ」の赤いラインか注意書きがありそうなんですが、未詳。燃料タンクへの注入孔部はおそらく赤でしょうと。

同じく主翼上面、編隊灯が涙滴上の「凸」モールドになってますが、写真を見ても晴嵐はおそらく、紫電改や彩雲等のそれと同じく凸じゃなく平坦な抵抗減少型(?)かと。

色塗りはいつものごとくの多色重ね(橙色部は3色、濃緑部は4色構成)。まず橙色の色調を決めて、それに合わせて上側面の濃緑を決定する順番。橙色完了後、濃緑かけて剥がす時の手法はゴマ油を使用(橙色の上に滴々描いておく。←あとで剥がす個所)。とかいいつつ、実は機体より架台の木板表現のほうが難しいわけですが(笑)。

日の丸他、橙色肌への既存マーキングを残す形で濃緑を後塗りしたという雰囲気をば。白線については、濃緑後にざっと描きなおししたような解釈で。←またそんな謎解釈を

彗星改造が却下され、新たな設計機と決まってから、まず特潜に搭載できるよう液冷で胴体をしぼり、各部の畳める機材、急降下爆撃をこなし、なおかつ八十番や魚雷を積む機体という、その機能満載をコンパクトそのものにまとめて、開発目的自体から見ればとんでもなく洗練された高純度の機体。んがしかし、その根本的発想自体が、限られたリソースを振り分けるだけのものだったかどうかが思案のしどころかと(汗)。やはり「ちからの入れ所」という点でも、我が海軍の一面を如実に。しかしながら、例えば6空母からの機体が真珠湾に舞ったその時同時に、パナマ運河へも日の丸の翼が向かっていたならば、あるいは以後の戦況に小さくない影響はあったかも知れませんな。

フィギュアはファインモールド製のメタル。偵察用具入れとおぼしきバッグを下げてる姿なんですが、そのバッグを持つ姿に終戦からの新たな旅立ちをイメージするの心。←牽強付会です  おそらくより以前の南方姿な設定のフィギュアですが、夏のイメージで防暑服そのまま、でも白や生成りじゃなく第3種軍装っぽい淡い草色で塗り塗り。それにともない、キャノピーは開けませんでしたが、機体各部のステップを出した状態にして機体と人との関わりをほんの少しだけ(汗)表現。

さて、そんなこんなで、なにがしか、あの夏の虚脱感、やりどころのない空気が出せたでしょうかね。また空振りでしたかそうですか。orz

〜過給器のインテイクが機首左舷にあるので、またしても撮影角度が固定されてしまう罠はご容赦。〜

<参考文献>

1)神龍特別攻撃隊;高橋一雄著、'01年、光人社刊、ISBN 4 7698 1015 6
  まさにイ-400潜での晴嵐出撃、その当事者たる著者による記録ですね。ただし類本と同じく、晴嵐は最後の方のみ。
  それでもいわゆる「秘話」が読める点、晴嵐を作るなら御手元に置いて吉。

2)隔月刊 ミリタリー エアクラフト No.049;'00年、デルタ出版社刊
  巻頭の特集が晴嵐。エセルさんのPacific war eaglesが初出とおぼしきカラー写真もあり。
  この機種に関しての日本語資料としてはハード/ソフト両面の比較的まとまったものじゃないかしら。
  でもそのカラー写真(2〜3ページ見開き)に「空技廠?」とあり、同じ機体の少し前の姿と思える白黒写真
  (11ページ)では「永徳工場」となってる等、読むには若干の注意は必要かと。(^^;

3)Japanese Submarine Aircraft; '02年、Mushroom Model Magazine社刊、ISBN 83 916327 2 5
  いわゆるキノコ本の赤シリーズの1冊で、日本の潜水艦搭載機を網羅。晴嵐はスミソニアンの機体の
  カラー写真も掲載(やや小さい画像で残念)。多少ともWalk Around的部分があって吉。

4)日本海軍機軍用機集;野原茂著、'94、グリーンアロー社刊、ISBN 4 7663 3161 3
  野原さんの図面/イラストで海軍機を解説、晴嵐は各部構造にも若干触れられてて吉。

5)月刊モデルアート No.532、日本海軍の水上機パート2;'99年、モデルアート社
  タミヤ1/48のキットが華麗に水しぶきをあげる印象深い姿で掲載。製作のお伴に。

他、'95年付近でしたかスミソニアンの晴嵐が復元なった時に、航空ファン等でカラー写真込みの記事があったはず。
それとMonogram出版のモノグラフは、私、未入手なんす。スミマセヌ。(^^;

(2006年8月14日初出)



SEO対策 ショッピングカート レンタルサーバー /テキスト広告 アクセス解析 無料ホームページ ライブチャット ブログ