<Sweet fascination of Mademoiselle>
Mirage IIIC No.38, EC 2/10 "Seine" 1981、Creil (Heller 1/48)
ミラージュIIIC 第38号機、フランス空軍第10航空団第2戦闘飛行中隊”セーヌ”所属、1981年(エレール1/48)

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エデュアルドのをやるならば、ストック抱えてるエレールのも同時に、というわけで。(^^; このキット、抜群のプロポーションだと知ってはいましたが、なにしろ複座型も作れる仕立てのパズル分割(汗)。ずいぶん長く待たせてしまいましたなぁ、マドモワゼル。

今回、こちらエレール機のお題は、この「防空ブルー」の色。もう皆さんからの情報も頂戴しつつ、ある深更に至りもう二度とは再現できない(配合色/比まったくその場限りのあてずっぽう)この色調に達したのでした。でも画面だとアカンのですね。静岡でナマのをみていただいた方々、あの色ですよ〜。でもこの色、IIICよりF1のそれに似てますが(汗)。雰囲気が良いのでこれでひとつよしなに。(^^;

フランス、その芸術分野で足跡を残した多くの人々がインスピレーションを得るべく、そして溺れたアブサン。そのニガヨモギの成分「ツヨン」が中枢神経系に及ぼす強い作用、中毒性ゆえに20世紀初頭に禁止された禁断の酒でありますね。その代わりを務めたのがブイヤベースに入れるペルノーなんかの茴香(アニス)系で、これをもってパスティス(=代役、贋作など)の名称起源に。しかしやはりその魔味(?)を求める人々の欲求抑え難く、長い不在の年月を経てよーやく、'81年に危険成分ツヨンの量をコントロールした品が市場に復活したという次第。角砂糖を水で溶かして加える(綺麗なグリーンが白く濁るのもふぁんたすてぃっく〜)独特の飲み方とそれ専用の匙などまで復活したというその'81年、今回の青いミラージュもニワトリ隊のマークをつけて復活。

「復活」というのは、この38号機、事故ったんですね(汗)。で、修復に少し時間がかかりまして。折角だから電装系を修復時最新のやつに替えちゃおうということが実行されたようで、その結果はフランス空軍に属した計95機のミラージュIIICの中で本機のみは一味違う、性能が高かったとの乗員回想が残っているようです。ちなみに'90年に行われたフランス空軍におけるミラージュIIIC最終飛行も、本機が務めた由。

正三角形に近い翼を中心にしたこの構成の妙、バランスの良さったらもう最高、黄金のプロポーション。

途中で挫折しそうになったですが(汗)、まあ慎重にパズルを組んでいけばできますし、そこに現れる実機に生き写し(?)の様子には、原型・キット設計者さんムッシュ達のすばらしい思い入れ、深い愛情がひしひしと感じられるところではあります。パズルみたいな部品(汗)が1機の機体に変貌する段階で、ミラージュの女神さんがトリコロールの衣を風に翻してするするっと降臨なさいますな。英国にエアフィックスあれば仏国にエレールあり、どっちも偉い。このプロポーションを越えるIIICの新キットってのは、未来永劫各スケールでも出ないんじゃないかしら。

ストック、これを作ってる最中には「まだ3箱もあるんですが(涙)」でしたが、ちゃんと出来上がってみればいつのまにか「あと3箱しか無いのね(涙)」に変わっておりました。←註;実はフォンドリーミニチュアのE型や5型のキットには、このエレールキットがまるまる1機分入ってる(部品取り用)ので、実際の在庫はさらに多いんですが。(^^;

色に苦労した機体、デカールはエレールとエデュアルドの混合で。主翼のウォークウェイラインが強すぎると雰囲気壊しそうで、デカールの巾を削って貼っています。尾翼のニワトリ印は気持ち大きめですが、エレールのほうがお気に入り。

*ちなみに雄鳥こそはフランスの象徴。なぜならば、フランス方面=Gallia(ラテン語)、雄鳥=Gallius、複数形はGallia(!)。ローマ時代、ローマの人々がガリア地方(フランス)のひとたちを「雄鳥」と。(^^;  ということで、母国の象徴を尾翼にまとう青いミラージュなのでした。

さて、機番は同じコードレターの31番機がエデュアルドの指定にあるので、少し数字をいじって使用。エデュアルドといえば、サイドワインダーもパイロンともどもエデュアルドキットから流用です(*IIICでも砂漠迷彩の”Vexin”隊機は、「マジック」ミサイルの運用能力あり)。

↑キットの部品に手を入れてもよかったんですが、奢ってしまったMDC製レジンのシート(マーチンベイカーのMB4)。ベルトもモールドされてて塗っただけですが、さすがに効果絶大。機体上側面は「防空ブルー」に対し下面はフラットなシルバー(塗装)、増槽は各種塗装がみられますが、今回はコントラストの利く無塗装ぎんぎらで。風防部と胴体の関係や前脚の具合など、このキットはホントに実機をよく写しておりますね。

計器盤の背後、計器の出っ張りや配線が風防越しにみえるので、ちょろちょろ追加(エデュアルドは少しだけモールドあり、さらに追加しました)。前部風防は上から時計と非常用コンパスが下ってるのでこれも追加。可動部天蓋にはバックミラーあり。

機体上面の塗り、水彩画的に下地のブルーグレイやミディアムブルーが少し透けるように、作った防空ブルーを重ねています。その辺りもモニタでは御覧にいれにくいですなぁ(汗)。

ね、よいキットでしょ、こんな角度からみても似てますもん。DEFAの機関砲は砲口から少し前の弾道溝に、衝撃波を消す構造が螺旋状に作ってあるんですね。ここは、あっしぃーさんとmayonaka卿にも資料を教えていただいて、真鍮パイプに切れ込み入れて「らしく」したものを両キットともにつけました。こーゆー箇所こそエッチングとか付録部品があるといいのにな、エデュアルドさん。(^◇^;)

主翼下にへばりつくような超音速増槽が好きでして(笑)。この増槽、飛行中は投下不可のようです。

懺悔。主翼を胴体と合わせる時に、上面の隙間防ぎに主翼を少し持ちあげておいたんですが、その結果、実機でみられるわずかな下反角が不足気味に(涙)。前縁のキャンバが見事に再現されているのがそれをカバーしてくれています。(^^;

静岡で並べたときのプレートに載せて。「フランス人よりフランスらしく」を目標に(笑)、しかも微妙なブルーが映えるように、ロートレックさんの「ムーランルージュ」のポスター図案をエンボス画像加工してバラ色気味に。で、しめしめと思ったあとに気付いたのは、バラ色ってローランサンさんですわね、ロートレックさんじゃなく。(^^;

さて、'81年。今回こちらは38号機、そして銀のは41号機。生産順からいって、その誕生の時は同時期に工場のラインですぐ傍に並んでいたはずです。そして両機ともそれぞれに、20年ほどもの間フランスの空を飛び続け、基地に翼を休め、また日々の整備や塗装の変更、さらには事故の修復をうけたり幾度もの所属部隊の変更を経て黙々と務めを果たして行くんですが、世間でアブサンが再度市場にでた'81年、2機は奇しくも同じセーヌ飛行隊で青い翼をならべることになったようです。そして95機の姉妹達が事故で消え、あるいは無事に務めを終えても解体されて姿を失っていく中、38号機が記念すべきフランス空軍最後のIIIC公式飛行を終え、2機ともに今も母国に保存、展示されているといいます。ひとに人生があれば、機体にもやはりその生涯というものがあるのでしょう。セ・ラヴィ。

その間、そしてその後の世界、ひとびとの思惑や時の流れも手伝って、いくさ場の空で相対する両軍ともにミラージュを装備しているといった事態も生じたわけですが、その状況に際してもマルセル氏ならきっと「なに、両陣営ともミラージュで飛ぶと? それでは両軍の操縦士は、ともに生き残るチャンスを得たことになるわけだ」などと言ったのでは。 

タミヤ1/100の箱絵を端緒とするミラージュIIICへの憧憬に近い気持ちを、この48で形にしようとはじめたわけですが、なんのこたぁない、さらに酔いましたね〜、とても蠱惑的な機体ですね〜、うふふふ。蜃気楼、ダッソー氏が名前に込めたそのとおりに、なかなか捕まえられませんが、机上の姿に捉まえた!と思ったら、実は捉まっていたのは私です? ヽ(゚∀。;)ノ

といったところで今回も終了であります。お粗末さまでした。m(_ _)m

ダッソー・ミラージュIIIC、38号機;
1961年10月13日ロールアウト、同年12月4日、Dijonにてフランス空軍へ引き渡し。
所属変遷;EC 1/2 、1/13、 3/2、 2/5、 2/10 ここまでは銀肌、1976年5月20日以後「防空ブルー」に。
1978年10月6日、1/10所属時に事故・損傷。81年3月5日まで修理、この際、電装系を最新に更新。
(今回はこの修復完了再就役時付近の姿を机上に再現。第一部の銀肌41号機とは、81年7月〜84年6月まで同じ隊に所属)
その後2/10に所属、90年7月29日にフランス空軍ミラージュIIIC型機の最終飛行に参加。
就役中のコードレター; 2-EN 、13QU、2-LT、5-OC、10-RW、10-SJ、10-RF
現在はフランス国内で展示/保存中。

参考文献;

1)M IRAGE III Mirage5, 50 and derivatives From 1955 to 2000;'04年、HISTOIRE & COLLECTIONS社刊、ISBN 2-913903-92-4
カラー側面図がてんこ盛りで、IIIシリーズからクフィルやチータまで網羅する好著。次にあげるDTU社のミラージュ本をかなり参考にしているフシあり。
2)MIRAGE III Tome1;'00年、DTU社刊、ISBN 2-912749-02-6 (初版のみで終了、版元で既に在庫なし)
ミラージュのIIIシリーズを扱うハードカバー、その第1巻はIIICとB/BEを網羅。その開発から就役、装備詳細や部隊配備に至るまで、白黒/カラーの画像をふんだんにまじえて、IIIのバイブル的仕立て。さらには驚くべき熱意でもって、仏空軍所属全機の詳細な履歴までもが明らかに(驚愕)。シリーズ第2巻ではIIIEを扱っています。本邦で店頭にあった最後の1冊と思われるものを、幸運にも確保できました(涙)。
3)MIRAGE III C/B AVIASCOPE1;'04年、AVIA EDITIONS社刊、ISBN 2-915030-06-5
これまた素晴しい熱意でもって、実機の細部を舐めるように画像として収録した本。内臓系モデラー必見?
4)MIRAGE V LOCK ON No.11;'91年、VERLINDEN PUBLICATIONS社刊、ISBN 90-70932-28-8
ヴァーリンデンさんとこのロックオンシリーズ。Vはベルギーで使われてますからね。で、そのVにもIIICと共通の部分も多いわけで、本書の鮮明な画像が実によいところを突いていたりします。
5)THE TALISMAN;原本'69年、英訳'71年=米ARLINGTON HOUSE社刊、ISBN 0-87000-149-3
ミラージュシリーズの生みの親、マルセル・ダッソー(旧姓ブロック)氏の自伝でありますね。その生い立ちから航空機との関わり、苦難のWW2時期を経て戦後にダッソー社が送りだした数々の軍/民双方の機体への思い等、さらりとつづられております。タイトルのタリスマン=お守りについては、現行ダッソー社航空部門のマークにもちゃんと反映されているのですが、ネタバレに近いので詳細は略します。(^^;

他に、新旧の「世界の傑作機」がありますが、ミラージュIII系をまとめて収録してるので、どうしてもIIIC限定の情報となると弱いんですね。でも日本語で読めるのはやはり吉。さらに、六芒星マークのIIICについては別に幾冊か出てますので、そちらに塗る方は別途検索されるとよろしいかと。

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(2005年5月9日初出)



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