どうも胸騒ぎといいますか嵐の予兆みたいなのを感じてしまう今日この頃(2009年8月後半)。実は大戦直前=1939年における銀色機体をやろうとしていて別件で検索してたらば、今年は英艦隊航空Fleet Air Armの百周年ということで。これは当家としても何か形にと思いまして、急遽仕立てた「これぞFAA也」なアイテム。(^^;   機体はまさに39年夏、欧州で大戦の火蓋が切られる直前における地中海上ソードフィッシュ@銀翼。部隊は「Nihil Obstat = Nothing stop us」を掲げ隊章にはマルタ十字もあしらう825NASですから、後にビスマルクを狩ることになる隊であり英仏海峡でエズモンド隊の悲劇にみまわれる隊そのもの、母艦グローリアスは、ノルウェイ方面戦の最中に独巡戦2隻により撃沈されることになるという、いずれも目前に迫った大嵐の中で激しい苦闘が待ち受けていたわけで。

この組みあわせでもって、タイトルには一番最初の「ターミネーター」ラストシーンで印象的だった「嵐がやってくる」=「There's a storm coming in.」を持ってこようということで開始。

タミヤさんの傑作キットに純正エッチングパーツ使用、デカールはちょうど色鮮やかなエクストラデカールの新製品が出てたので。大戦突入前や戦後の蛇の目は、こうして明るめのラウンデル@赤/青じゃないといけませんな。カウルと機首とで色合いが違うのは、実機に塗られたセラックス・グレイ(英セロン社の商品名)なる軽金属用合成塗料が熱によって変性しやすかったため。実機写真でも別の色のごとくくすんでグッと暗調に変化しちゃってる機体あり。変色を見越して?最初からカウルを黒く塗ってるのもいますが。

上翼前縁のスラット、これを切り離して垂れた状態にしようか迷いましたが、この手のスラットによくある「出てる機体もいれば納まってるのもいる」という部分でもあり、今回はそのままで(少し後悔)。機体の組み立て自体は、参考文献欄の最後に書いたスケビVol.12に基本的工作手順&注意事項が写真つきで掲載されてて有用。でも最初からよくよく考えて進めないと、後からでは非常に塗装しにくい場所も(下翼付け根の黒塗り=滑り止めとか)あるので用心。←結局支柱の隙間から筆を抜き差ししつつ塗ったやつ

エッチングの張り線は、非常に巧く精度の高い組み立てができるのなら接着せずとも行けそうですが、精度の低い私としては(汗)、両端じゃなく片方の端だけ必要なら接着するという方式で、できるだけ最後までたわみの補正が利くようにやりました。疲れました。orz   主翼が折り畳み状態も考慮されてる分割なので組み立て途中で上反角が心配になりますから、そこらの調整も結構な難関、というか手が2本では足りない感じ。(^◇^; もしかしたら、上下主翼を支えるいわゆる治具的なものを自作して作業というのも1手かと。

張り線といえば、昇降舵と方向舵の作動ワイヤは基部だけでエッチングもないので、ステンレス線で調整。方向舵に出るのはダブルになってますが、太さの関係でシングルのまま(汗)。全体としてはエッチング使用ですと少し繊細さに欠ける姿となりますので、複葉機系に馴染んでみえる方々は、テグスなり細いラインで全部張られたほうが古典的味わいには良いかも、しかし線の断面が〜というジレンマとの妥協産物になりましょう。

以下、順不同的に。

様々な実機資料があるものの、現存機と生きてた現役当時の機体で違う可能性のある部分が複数。要注意。上翼操縦席部のバックミラーーは、作例機なんかは無し。同部につかまるハンドレールをつけてる機体あり(戦後?)。脚柱の足掛け部も、戦後機では滑り止め加工して暗色とかのが。そこと、主翼ロック用の把手の赤塗りとかはたぶん戦後のなんですが、模型的に採用。(^◇^;   同様の発想で作業した乗員席部機体のふちにある革パッド@レッドブラウン、少し厚くしすぎたかも〜。

空中線は作例機のごとく真ん中1本のと、左右の上翼エルロン部前からY字になるのとあり。同じく機体により違うのがペラ。銀っぽいのとセラックス・グレイっぽいの、さらにラインが赤と黄色とそれぞれあれやこれや。

セラックス・グレイはライト・ガルグレイに近似。この金属部と銀ドープの羽布部とのコントラストがひとつの要。ドープ部はツヤ消しでガサガサしすぎないよう、むしろぬめっとしたツヤをもたせて吉かと。

カウル前端〜排気管部の玄妙な焼け色は、しっかり金属色塗ってからタミヤさんのウェザリングマスターを複数、気の済むまで動員。

右水平尾翼に乗ってるのはライフジャケット@ポリパテ製。イマイチ形がすっきり出てないんでわかりにくいですが、ひょいっと置かれた海上勤務の証。(^^; そのヒモが合成風になびいてるんですけど、さらにわかりにくい。ヽ(゚∀。;)ノ  このライフジャケットの置き方とか、フィギュアが今回は1体だけとかは、「嵐が〜」の雰囲気で多少の不安定要素、不安の表象をとの意図。←わからんってばよ

このデカール、参考文献にあげた某書掲載のカラー側面図を元にしてるようで、機体側面コードの「G」の書体が違ってて、実機のそれより「G」の腕のところが長すぎるので適宜調整(上翼下面の文字も調整)。ついでにシリアルNo.も大きさや書体がわずかに「?」と思えますが、そこはそれ。←おい  で、実機ではちょうどカウルを外してエンジンの調子をみてる?写真ゆえ、カウルの塗りがあるか否かは不明。スピナの色も不明。一部カラー図で黄色く塗られてるホイールは、黄色でないのは確認可能。普通に考えてカウルが黄色ではないとすると、垂直安定板が黄色く塗られてるこの編隊リーダーもしくは隊長機を前から見た時に認識するために、どこか黄色があったほうがいい必然ゆえにスピナは黄色と勝手に推定。

類例からの推測でさらに踏み込むと、この手の塗りになってる機体では主翼上面にも黄色で何か塗ってある可能性あり。しかし実機写真で見える範囲では何も無さそう。

昇降舵くらい少し下げたかったんですが、張り線とヒンジの関係でコストパフォーマンスが低いと判断して見送り。(^^;

主翼下にずらずら並ぶ爆弾架、いかにもプラモ的に?弾体押さえ部が単なる三角板になってるので、いちいち削って円弧状に加工&少し細棒を追加。ここの作業は効果大かと。

主輪の角度はキットのごとく少し内に向かうのが正解。主脚上の胴体側面につく観測?窓、これがアナタ、接着したらマスクしてその後に支柱つけてあれこれやって色を塗って最後の最後にならないとそのマスクを外せない、なんという厄介さ。ヽ(゚∀。;)ノ

例によって、以下のお話は全くのフィクションそのものなのですが。

M先生

イングランドも夏の盛りを過ぎる頃、学寮の庭でも夏の花々がさぞ美しく咲き誇っていることでしょう。おかわりございませんか。お手伝いさせていただいた論文「ノッティンガムにみる地域統治の変遷〜ロビン・フッド物語の背景」、仕上がりを楽しみにしています。

こちら地中海では、大西洋ほどのことはありませんが、それでも時に天候の変化がめまぐるしくて、今も艦の左舷遥かに望む空には壮麗な「ヤコブの梯子」が、前方にはその断雲につらなる暗く厚い巨大な雲の塊が迫ってきています。そんな空と海とを眺めているとなにかの啓示を受けるような気にもなりますが、天啓を受けるほどの才知と敬虔さに欠けるのは御存知のとおりです。

さて、先日はマルタへの飛行任務があり、ちょうど隊に配備されたばかりの機体の調子をみるのも兼ねて飛んでまいりました。かの島には、20年以上前の大戦時にこの海へやってきて地道な任を果たした日本人達、その任務中に命を落した連中の墓所があります。既に昔日の英日間の同盟関係は無く、一時は良好にみえた合衆国とも次第に軋轢を増しつつあるかのようなあの東洋の古い帝國のことを、その墓所を前にしてふと考えてしまいました。世界の西と東とで、大陸の傍に浮かぶ同じような島国、同じく伝統有る王室を戴き連綿と続いてきた歴史を抱える国、かつて我が国海軍の弟子として海に乗りだし、今や隠れもない一大艦隊を擁する国。御存知のように老父は長年ヴィッカースで働いておりましたので、かの海軍へ引き渡した最後の大艦『コンゴウ』の艦影を今もよく憶えているようです。同じ海軍国同士で、ある種の幸せな関係が維持できればよかったのでしょうけれど。

遠く東の海にあって我が国の来し方をトレースするかのごとく思えたあの帝國は、もはやこちらの側には帰ってこないのでしょうか。アフリカにちょっかいを出す伊太利、そして欧州大陸の要となる部分で不穏さを増す独逸との接近がとても案じられます。ボタンのかけ違えがどこで起こったのか、そのかけ違えの果てにどの国かが全てのボタンを引きちぎってしまう動きを今にも始めてしまわないのか、行く手にみえる暗雲が心にも入り込んでまいります。

独逸といえばここ数年における我が政府の対応が実に弱腰で冗長であるという件、先生は常々「時間をかせがねばなりません」とおっしゃってみえましたね。間に合うといいのですが。36年のベルリン五輪の時に抱いた異様な違和感が忘れられません。来年に予定されていたトウキョウ大会はなくなり、代替のヘルシンキもどうやら危ういようです。するとさらなる代替が四年後のロンドンということになろうとの噂があり、24年のパリ大会短距離でセンターに揚がったユニオンジャックを知っている身としては、自国開催大会であれば是非ともまた旗の揚がるところが見たい、陸上やボートで我が学寮からメダリストを出したいという思いが焦燥に近くなっています。

フランスが自信を持つマジノ線要塞、あれはコース上に置かれた障害物のようなもので、それを飛び越える手段を身に付けたものが現れていったん障害物を越えさえすれば、あとはもう英仏海峡まで平坦で真っ直ぐなコースが伸びているだけではないかという気がしてなりません。私のように自らすすんで予備役に、その定期任務につくような者はともかく、学ぶことや駆けたり跳んだりの天から与えられた季節を謳歌するべき青年達が、できうれば嵐に合わぬよう、嵐にあっても耐えしのぎ、四年後のロンドンで血を流さずに競い合えることを願うばかりです。

神よ、どうか英国を守りたまえ。願わくばこの世界を守りたまえ。

それでは、またお便りいたします。どうぞお元気で。

1939年8月某日 地中海某海域 HMSグローリアス艦上にて 
先生の不肖の弟子にして気の利かぬ助手、予備中尉Rより

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*1924年パリ五輪の陸上競技における英国選手の活躍は映画「炎のランナー」に詳しい。
*1940年大会は東京での予定を日本が返上、代替案でヘルシンキ開催と決まるも直後に第二次大戦勃発。次期開催は1944年ロンドン大会と予定されながらこれまた大戦中で中止、1948年にあらためてロンドンで開催。そして来るべき2012年夏、五輪はまたロンドンへ回帰の予定。

グローリアスの飛行甲板ということになるベースはかなり悩んで(装甲甲板以前の英空母は甲板の資料があまり無い)、色はグレーで白線あり、材質は日米母艦みたいに木を剥き出しじゃなく金属貼ってるっぽい?との方向で。1000番だかの耐水ペーパーそのものを貼り付けて適宜「らしく」塗装。タイヤ痕はプラ板でテンプレートを自作して、これまたウェザリングマスターで。甲板はそれなりに使い込まれた風情ながら、機体自体は戦前に配備された中では最終ロットのうちの1機だということで、ヨゴシは軽度のみ。

かくして暗雲を目前にした銀翼ソードフィッシュは一応の完成ということで。実はこれをやってる間の本邦国内情勢で、同じく暗雲が迫っている感を強く抱いての作業でもあり(汗)。内なる侵食に耐えられますように。願わくば類い稀なるこの国の行く末に、嵐の襲来無きよう。たとえ嵐に見舞われようとも、再び陽光順風の航海が訪れますように。

と、今回も御粗末様でした。おかげさまでFAA百周年記念+αのアイテムが無事に完成〜。やれやれ。m(_ _)m

<参考文献> (一部のみ)

1)Fairey Swordfish in action ;Squadron/signal publications刊、ISBN 0-89747-421-X
  ちと古い(汗)。が、基本参考書であり他にない写真もあったりで有用なことには変わりなし。
2)Swordfish  Aeroguide ClassicシリーズNo.4 ; '88、Line Wrights社刊、ISBN 0-946958-29-7
  タミヤさんのキット発売の折、同時に提供されたとおぼろに記憶。細部など参考になる基本書。
3)Fairey Swordfish Mks. I-IV Profileシリーズ212 ;Profile社刊
  これも古くからの基本書。本機種の場合、細部写真等は当時の活きてる機体なのか現存機なのか常に確認の必要あり(本書に限らず)。
4)Fairey Swordfish From the cockpitシリーズ10 ;'08年、AD HOC社刊、ISBN 978-0-946958-68-9
  最近とみに勢いのある蛇の目シリーズの1冊。208頁で結構厚め。今回使ったデカールは、本書のカラー側面図を参照?
  なぜなら「G」の腕部分が実機の書体と違って長すぎるところまで同じゆえ。(^◇^;
5)Fleet Air Arm Camoflage and Markings, Atlantic and Mediterranean Theatres 1937-1941;
  '08年、DALRYMPLE & VERDUN社刊、ISBN 978-1-905414-08-6
  FAA機の塗装とマーキングに特化した1冊で、実機写真を豊富に盛り込んで解説をという形。カラープロファイルもあり。
  これの続巻が早く見たいのう〜。作例機実機写真の大きめのが本書にあり。
6)Wings & Waves, ON TARGET Special No.5;'08年、The Aviation Workshop社刊
  同じくFAA機の塗装とマーキング本ながら、こちらはカラー側面図ばかり並べた仕立て。銀翼期の姿主体で、かなり派手なのも。
  ただし、実機写真と照合すると、どうも「?」な部分が複数ある機体もあり、附記されてる出典で実機写真を見てみるが吉。
7)Fleet Air Arm Aircraft Units and Ships, 1920 to 1939;'98年、Air Britain社刊
  6)のカラー図の多くが参照してる本。実機写真は小さめながら比較的鮮明なもの多し。これの戦中期巻が現時点で版元品切れ、
  ネットの古書で法外な高値になってるのがどうにもこうにも。

キット発売時の紹介記事は、モデルアートだとNo.544(2000年2月)、Scale AviationだとVol.12(2000年3月)。
ついでにスケビはその前号(Vol.11、2000年1月)の巻末にこの機種のエアロディテール3/4で現存機写真記事が。
もちろん、当時の乗員諸氏や周辺の方々による文字本は版を重ねるペーパーバック他多数。

(2009年8月23日 初出)



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