さて九九艦爆です。この機種は古風な固定脚とハインケル系の美しく優雅な主翼とが主役で織りなす不思議な調和を感じさせる機体形状、そして真珠湾でのグレー姿が印象的。そこに最近の新刊で瑞鶴の物語をつづったのが出まして、一気に印度洋だ、珊瑚海だとなった次第@単純。ここのところの知見では、どうやら印度洋に出る前に艦爆隊は機体上側面に濃緑を塗ってるらしいという方向なので、それを採用。日の丸&機体符号の白縁や機首反射除け塗りの有無など検討事項は多けれど、セイロンでの迎撃側@RAFの記録にみる被撃墜機主翼写真や珊瑚海での翔鶴機写真なども参照しつつ塗りを決定。機体ナンバーは真珠湾時の坂本隊長機で、瑞鶴は損害無しで南へ下ってるのでそのまま濃緑姿にしてみました(ケンダリー基地で塗り替えてる? とするとただでさえ塗料不足気味な状況ゆえ、基地にもし蘭印軍仕様の塗料が残ってたら使ったかも?)。ちなみに坂本大尉は印度洋作戦の後にいったん内地転属になってるようで、艦爆隊長職を引き継いだのは同期でヒゲ面が有名な江間大尉。ここでも尾翼に帯いれた機体だからそのまま引き継いだだろうと勝手に解釈しますと(汗)、珊瑚海での米空母誤着艦ニアミス事件(ヨークタウン?)もこの機体のはず。そして翔鶴損傷後に瑞鶴へ全残存機収容のため、戦闘でエルロンヒンジが逝っちゃってた本機は海中投棄。そこらの推定が合ってれば、いまも珊瑚海のどこかで眠ってるはず。

さらに今回のお題は随分前から構想だけはしてた「風」の描写。南洋をゆく母艦上での風と陽光とを机上にという無謀な(笑)試み。当然ながら飛行甲板も必要なわけですが、既製品もあるにはあっても縦横きっちり直角すぎて風情がない、あるいは眼環の配置が違うなどでどれも使えず自作することに(汗)。

上画像で左が最初にやってみたやつ、右がその後でやった本番甲板。先にやったやつは甲板の板幅を1/48で考えて3ミリ幅にしたマスキングテープをプラ板に貼り込んで色塗り、眼環はプラ管輪切りを埋め込み。もう実に使い込まれた板材っぽい雰囲気がでたんですが、1)瑞鶴は当時いわゆる新鋭艦なので、ふるびた校舎の廊下みたいな板甲板は似合わない。(^◇^;   2)貼り込んだテープがどうしても端から剥がれて浮いてくる。  の2点で却下、あらためてプラ板に直に板を彫り込んで塗る方式に変更しました。それが右なんですが、この時点からさらに多色かぶせたりペーパーでこすったりして風合いを調整しとります。(板の彫り込みや眼環の位置等は、あらかじめパソコン上でラインと輪ッかをドロー系ソフト使って線図描きした紙をプラ板に貼って掘って剥がしてという手順。)

飛行甲板、しかも特定の母艦で特定の時期となりますと、白線の幅と描き方や制動索系とか照明の配置ほかキッチリやろうと思うとキリがなくなるので適宜妥協しました。ヽ(゚∀。;)ノ それでも考え足らずで機体の配置方向との関連上、完成品をよくみると機首が艦尾むいてる?ってのは御容赦です。orz <特にフネ系の方々

さて風をつかまえるべくのアイテムが日除けキャンバス。問題点は2つで、 1)前部は左右2個所がたぶん甲板眼環に索で繋止、その真ん中でペラの1枚にも位置固定用のストリングが? でも後部がほとんどわからない(汗)。アンテナ支柱を通す孔があるか、二股になってるのをさらに後部で閉じてるかのどっちかと思うも確定できず。今回は二股に。  2)情景でまとめるなら機体が陰になるとアカンので、有る程度は光を通す素材をみつけないとダメ。

で、「布」の素材を決めるのにプラペーパーだトレーシングペーパーだ不織布だ濾紙だとそれぞれ複数種、結局10種類以上試しまして(汗)、光りが通らないとか風にあおられた形を維持できないとか風合いが気に入らないとかあれこれの果てに、最後に残ったのは「天ぷら敷紙」。薄い和紙に似た雰囲気で(原料はサトウキビの搾りかす)、吸った油を逃さないように片面だけかすかに非透過性処理がかかってるような。スーパーのキッチン用品コーナーで入手。これを形に切ってからツヤ消しクリアのスプレーを重ねつつ、最後は枠みたいにステンレス線を曲げたやつで思った姿に。あおられて宙に舞うストリングは糸ハンダと真鍮線(短ければ糸ハンダが柔らかさゆえの自在性で有利、長いと形を保持できる@垂れてこない真鍮線が有利)。

この日除けがかぶってくるので強度が必要なアンテナ支柱は真鍮材で置き換え、アンテナ線自体は黒パンストほぐしたヤツで対処。後席機銃もファインモールドの金属製に(いったんキットのプラ部品で収納状態にしたのを、やっぱり後席の納まりが悪いと支柱等半自作で強引に出した結果でもあり)、前後の照準環も同様にして転ばぬ先の強度確保。

フィギュアはタミヤの1/48零戦シリーズに入ってる「見送る人々立像」を切った貼ったで姿勢を替えて、頭部はエデュアルドの陸軍地上員セットから拝借(という出自ゆえに、やや小柄かと。ま、当時の日本人ですし・・・)。

エンジンは毎度のごとくプラグコード=糸ハンダ、コックピットでは前後席隔壁の孔を開口して伝声管(これが前後ペアの意志疎通の要)を追加。あと↑上の画像で主張してるペラですが、どうもキットのペラは「か弱い」気がして却下。同社ドーントレス(宿敵じゃねぇか)から持ってきて手を加えて使用。日除け布の固定方式からいえば、3翅ペラは上に1枚というこの位置が正解。でも逆三角形配置が好きな私はタイトル画像なんかで強引にそっちを採用。(^◇^;  さらにか弱さをなんとかしようとの意図でカウルフラップも軽く開位置に。ついでに脚も気持ち短くて「く」の字型にほんの少し曲ってる気がしたのでそれを素直に改修@切断&接ぎ。車輪止め自作。ま、機体で悩んだ時にいちばんの示唆をもらえるのは小池さんの箱絵でありますね。でもって機体の塗装等は、いつもの多色重ね。今回お初の試みは、ハイライト部を色の明暗だけじゃなく最終的なツヤの加減でもやってみようというやつ。写真の撮り方によってはある程度の効果あり? わかんないすな。orz

日除け繋止ストリングの固定側や機体繋留索なんかは、プラ板甲板の眼環部が孔あいててその下はコルクそのものなんでステンレス線を刺してあるだけだったりします。主翼下面での繋止金具等は省略(汗)。

どこか緊張感の抜け道が欲しかったのと、乗員じゃなく甲板員でやりたかったので機体の装備は250kgじゃなく両翼の60kgで対潜哨戒待機状態で。ちなみに、甲板員諸氏らが艦が損傷をこうむる時すなわち攻撃を受けた時には、破片や炎への対処上で長袖長ズボンが良いと覚るのは珊瑚海で翔鶴が攻撃くらってからのことと。

(以下の小文は全くのフィクションです)

父上さま、母上さま

おかわりなくお過ごしでしょうか。分隊士が内地へ転勤されるというので、この手紙を■■で投函していただけるように頼みました。少しは検閲の墨塗りが減っているといいのですが。

いたずらばかりしていた三男坊の自分が、いつのまにかこんなに遠くまで来てしまいました。氷に閉ざされた北の海を抜けて■■■へ、そして今度は赤道をこえて南の■■■へ。さいわい、自分も同僚達も皆元気にやっております。

子供の頃からいつも空をゆく姿を見上げていた海軍さんの飛行機、その搭乗員になりたくて随分親不孝をいたしましたが、幼い時にやったひどい中耳炎のせいでしょうか、結局最後の身体検査ではねられて整備畑へ回されたのがつい昨日のことのようです。それでも毎日好きな飛行機とともにいられるので嬉しくもありますが。

このところは艦が暑熱の■■■を進んでいるので、待機中の機体に日除けのケンバスをかけてやる毎日です。甲板上で強い風にあおられて時々顔も叩かれますが、そのはためく様子をみていると浦に幾艘もゆったり浮かんでいた帆曳船、あの真白い帆をぱぁんと膨らませた姿が思いだされてなりません。漁師連からわけてもらったとれたての白魚や若鷺の味もなつかしくて困ります。次に帰った時は、ぜひ天ぷらを山盛りの丼でお願いいたします。

浦の船大工の家に生まれた自分はそんな思いをしていますが、 同じケンバスのはためきをみても、布団屋の跡取りや染物屋の次男坊にはまた別のものがみえているようです。さまざまな家からやってきた自分たちですが、今は一丸となってお国のために働かなくては。■■へ出た兄貴達もきっとしっかりやっているでしょう、便りがあるといいのですが。

内地ではちょっとないくらいの日焼けでみんな真っ黒になっています。いま帰ったらきっと驚かれるでしょうね。では、このへんで。また手紙を書きます。どうぞすこやかにお過ごしください。

追伸  先日、生まれてはじめて海豚をみました。最初は見張りが敵潜と■■■かけたくらいで、すごい数の群れが飛び跳ねながら艦と競うように泳いでいて。どうしてあんなに速く泳げるのかと、みな吃驚。

真珠湾で華々しい戦果をあげ(特に瑞鶴飛行隊は損害なしだし)、ラバウル方面もさらっと片づけていざ印度洋へというところ。その印度洋では英艦隊を相手に驚異的命中率(瑞鶴隊は90%以上命中。外したペアが気の毒。)をだして九九艦爆の絶頂期をむかえるわけです。んが、実はその戦果の陰ですでに、後日の大敗北を招くあれこれがじわじわ出てきてたわけでもあり。いわく空母機動部隊による航空攻撃作戦の凄まじい展開スピード(指揮がついていかない)、いわく撃たれ弱い(涙)艦載機たち、いわく偵察不備による情報の致命的齟齬、いわく攻撃装備切換による母艦上の大混乱。およそミッドウェーの敗因となる重大要素がほとんどでちゃってるのに、それへの対応が後に活かされていない、同じマイナス点を繰り返して負けている悲劇。次々に「さっきまでそこにいたのに」な戦友が海と空とに消えていく衝撃、間髪いれず進展していく戦況を通して改善されるべき点が幾つも具申されていたのに反映されず。そこにはさらに「新米の五航戦でも珊瑚海であれだけやれたんだから、熟練の我ら一航戦、二航戦なら鎧袖一触であるぞ」という面での慢心も?  そしてむかえる大転換点、懸命に迫る米海軍もまた齟齬と混乱との中でワンポイントの光明をつかみ取るのですが、それはまた別の機会のお話。

今回も機番を途中で変えることになったり(当初の機番機だと後の南太平洋海戦じゃないかとの疑いで)、日の丸の白縁を細めにしようとして二度手間になったうえによれたままになったり(泣)、二度手間といえば甲板もそうだし日除けの素材と形状決めで各方面にお知恵拝借しながらも延々右往左往したり(汗)と、時間ばかりかかりましたが息切れしつつもなんとか形に、というところ。

毎度、おそまつさまでございました。

<参考文献> 

#全般
1)勇者の海 空母瑞鶴の生涯 ;森史朗著、'08年、光人社刊、ISBN 9784769813774
  相当な力作かつ大作のハードカバー。瑞鶴の誕生から艦と乗員との物語をつづって飽きさせず、
  この巻ではひとまず(?)ミッドウェー海戦が終了したとおぼしき(瑞鶴は参加してないので伝聞的に記載)
  あたりで終了。真珠湾で、印度洋で、そして珊瑚海での姿が活写されております。
2)暁の珊瑚海 ;森史朗著、'04年、光人社刊、ISBN 4769812280
  史上初の空母機動部隊同士の海戦となった珊瑚海でのいくさを日本側を主体に米側視点もまじえつつ
  精緻につづられた書。うえの瑞鶴本と同じ著者氏ですので、安心。
3)空母艦爆隊 ;山川新作著、'04年版 光人社NF文庫
  大戦を第一線で闘って生き抜いた著者による艦爆隊の「始まりから終りまで」。
4)激闘艦爆隊 ;小瀬本國雄著、'94年、朝日ソノラマ新戦史シリーズ文庫
  同じく、大戦を生き抜いた艦爆乗員ご本人による瞠目の艦爆乗り一代記。真珠湾から終戦まで
  艦爆ひとすじで生き残られたかたというのが数えるほど、その生え抜きおふたりがきちんと
  本を書いて見えるのが大吉。当然ながらふたつの本で重なる描写も。
5)歴史群像 太平洋戦史シリーズ No.3 勇進インド洋作戦;'94年、学習研究社刊
6)歴史群像 太平洋戦史シリーズ No.4 ミッドウェー海戦;'94年、学習研究社刊
  一連のビジュアルと記事でまとめられた戦史シリーズ。6)には珊瑚海海戦が含まれております。

#九九艦爆
1)世界の傑作機 No.33 99式艦上爆撃機;'92年、文林堂刊(旧版は'85年のNo.151)
  お馴染み写真シリーズ。印度洋に出る直前の蒼龍隊機や珊瑚海での翔鶴機の濃緑塗りなど参照。
2)丸メカニック No.34 九九式艦上爆撃機;'82年、潮書房刊
  機体ハード面ではやっぱり頼りになりますな。
3)真珠湾攻撃隊;モデルアート誌臨時増刊、No.378、'91年、モデルアート社刊
  たぶん後年改訂版が出てたと思うんですが、最初のしか持ってないや(汗)。巻末に真珠湾攻撃に
  参加した隊の「その後」が写真入りで。さらに機体塗装類推のネタ本でもあり。

#母艦・瑞鶴
1)日本の航空母艦 軍艦メカニズム図鑑;長谷川藤一著、'97、グランプリ出版刊、ISBN 4876871841
  瑞鶴の飛行甲板を自作しようということで頼りに。ひこーき屋としては甘くなりがちですが(汗)、
  フネ系の方がみればどの時期どの母艦、甲板のどの辺りとか見抜かれると思うのでご用心。(^^;
2)日本海軍航空隊 軍装と装備;モデルアート誌臨時増刊、No.655、'04年、モデルアート社刊
  やはり海軍航空隊機にフィギュアなど添えようというのであれば必須の参考書。母艦甲板情報も。
3)歴史群像 太平洋戦史シリーズ No.13 翔鶴型空母;'97年、学習研究社刊
4)歴史群像 太平洋戦史シリーズ No.14 空母機動部隊;'97年、学習研究社刊
5)歴史群像 日本の航空母艦パーフェクトガイド;'04年、学習研究社刊
  それぞれに、瑞鶴(の一部にせよ)を机上に再現するのに有用このうえなく。

他にキットレビューの各模型誌や艦爆方面特集、そしてネット上でセイロン島で迎撃したRAF側の資料等(被墜艦爆の翼写真なども)。
http://www.lankalibrary.com/geo/30-squadron.htm

(2008年6月9日 初出)



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