<Here come the Black Arrows!>
Hawker HUNTER F.Mk.6 (Revell 1/72)
XG194:N of No.111Squadron, "Black Arrows", September, 1958.
Flown by Squadron Leader Roger L. Topp AFC (Markings are partially surmised)
以下の文章は、ほんの少しの事実をまじえたフィクションです。(^^;

1957年夏、英国ファンボロー航空ショー会場;
『さあ皆さん、会場右方向上空にご注目下さい! 英国空軍第111飛行隊ブラック・アローズの9機編隊がコントロールタワーをかすめて進入してきます。一糸乱れぬ緊密な編隊をその先頭で率いるのは、エジンバラ〜ロンドン間の飛行速度記録保持者にして類い稀なる統率力の持ち主、ロジャー・トップ少佐! 少佐の指揮により艶やかな黒いハンター戦闘機が青い空に描きあげる華麗な空中演技の数々をとくとごらん下さい!!』

同所、暫時後;
「少佐!トップ少佐!僕にもサインをお願いできますか?」
「ああ、いいとも君。名前はなんというのかね?」
「は、はい、ジョナサン、ジョナサン・トレーシーです。素晴しい飛行演技でした!」
「ああ、ありがとう。──ジョナサンへ、とこれでいいかな?」
「ありがとうございます。僕も少佐みたいなパイロットになれますか?」
「もちろんなれるとも。我が英国空軍は君を待っているさ。おいみんな、ちょっといいか? こっちへ来てこの未来の戦闘機隊長たるジョナサン少年と一緒に写真に納まってくれないか」

同年初秋、ロンドン、国防省;
「よろしいか、諸君。従って国防白書においても、我が国は今後、空の防衛を全面的に無人誘導飛翔体、すなわちミサイルにゆだねる態勢に移行し、有人戦闘機の運用を速やかに停止していく旨、明記するものとする。新型機の開発においても、ごく一部の例外を除き、進行中のものも含めてこれを完全に中止する」
「しかしそれは時期尚早ではありますまいかと何度も──」
「すると君は息子や孫たちを乗せた飛行機が、またしても空で散るのを見たいというのかね? そして搭乗員たちの訓練費、飛行隊の維持費、新型機の開発費といった莫大な予算を生みだす魔法でも使えるといわっしゃるか?」
「──そ、それは──」
「本件については以上で結論とする。他に異論はありますまいな? よろしい。では次の案件──」

翌1958年初夏、第111飛行隊;
「さて、今シーズンはどうします、少佐。まさかの事態、あの1940年の夏にこの国を護ったのは他ならぬ『かくも少数の』戦闘機乗りだったというのに!」
「そうですぜ、隊長。俺はヤンキーたちが羨ましい。空軍はスーパーセイバー、海軍もダグラスのデルタ翼機、さらにグラマン製超音速機も配備と来たもんだ。その贅沢さに比べりゃぁ、別嬪とは言えもう時代遅れの婆さんですぜ、うちのアレは。それさえも奪われようとしてるってんですから」
「まったくそのとおり。合衆国もフランスも、共産主義者たちでさえもマッハ2級機を配備する準備が整いつつあるって言うじゃないですか。ところがこっちじゃ間もなく戦闘機乗りなんざ過去の遺物になりそうです。ライトニングの配備予定が中止にならなかったのは奇跡的だ!」
「いや、そのライトニングにしてもだ、今ハンターを装備している飛行隊全てに行き渡ることはなかろうと私は思う。幾つかの隊は解散させられるだろう」
「なんと!万事休す!こりゃあ転職を考えたほうが良さそうだ」
「そこでだ、諸君」
「は?」
「まかりまちがえば、次からの航空ショーは単なるミサイルの展示会になってしまうかも知れないじゃないか。ならば今、この時に英国戦闘機乗りの誇りをみせつけてやらなければ、機会は二度と無いかも知れん。それが、艱難辛苦を経て常に備え国を護って来た先輩達への礼儀でもあろう」
「しかし少佐、どうしようと?」
「去年パリ・ショーで編隊着陸を即席でやったろう? あの時のウケの良さを覚えてるか?」
「ええ、そりゃもちろんですが」
「私が着任してから今まで4機、5機、7機、9機と編隊の機数を増やして来たわけだが、9機編隊もなかなかの評判ではある。しかしまだ足りない。これが最後の機会になるかも知れない演技とすれば、なまなか普通のやりかたじゃ駄目だろう」
「ヤンキーのチームは6機編隊ですから、9機でもかなりのものだと思ってたんですがね。じゃあいっそ飛行隊全力の16機でやりますか?」
「しかし全機がシーズン中フルに飛べるとは限らんぞ。予備機を考えにいれないと」
「いやいや諸君、私が考えているのは古今東西、空前にして絶後であるだろう大編隊での飛行だよ。21機、ひょっとすると22機での編隊ループだ」
「!!」
「そ、そりゃ無理でしょう。そもそも足りない機数はどこから? まさか配備数を増やしてはくれんでしょう。第一、機体があっても乗り手がいませんぜ」
「私が直接、各飛行隊長にかけあうさ。機体と操縦士を込みで借用しようじゃないか。なに、英国戦闘機隊のプライドがかかっていると言えば、否やはあるまい。では早速──」

同年9月第1週、英国ファンボロー航空ショー会場;
『ご来場の皆さま、会場右手の空にご注目! トップ少佐のブラック・アローズが、今年もまたファンボローの空に帰って来ました! しかも以前に増しての大迫力で演技を繰り広げます。今年は驚くなかれなんと22機編隊という、世界でもいまだかつて誰も挑んだ者のいない機数での飛行演技をとくと御覧下さい!!』

同所上空;
──ジョナサン、君は今年も見に来ているのだろうか。君が空軍に志願できる歳になる頃、そう、10年先に戦闘機隊はまだあるのだろうか? いや、それとも英空軍そのものが? 今年のこの空、私たちのこの飛行演技を眼に焼き付けておいてくれ──

「トップより全機。さあ、いくぞ。ループ!

週明け、某紙記事よりの抜粋;
──厳しい財政事情に鑑み空軍予算にも容赦の無い大鉈がふるわれる中で挙行された今回のファンボロー航空ショー週間において、天空の列聖簿に新たな歴史が刻まれた。ウォティシャム基地から飛来した英国空軍第111飛行隊による空前の大編隊アクロバット飛行がそれである。『ブラック・アローズ』として既によく知られている同隊は当年とって37歳のロジャー・L・トップ少佐(AFC、2バー)の指揮により、漆黒のホーカー社製ハンター戦闘機を自在に駆って、22機という途方もない機数での一糸乱れぬ壮大な編隊宙返り飛行を白眉とする空中演技の数々を、連日にわたり我々に見せつけた。この殆ど信じられないほどに印象的な飛行展示は週のはじめから人々の噂が噂を呼び、最終日となった日曜日には王室関係者をはじめ無慮11万人の大観衆がこの壮挙に惜しみない拍手と歓声とを送って誇り高い英国空軍飛行士たちを讚えてやまなかった。事情通によれば、指揮官トップ少佐はこの秋の異動により隊を離れるとのことだが、それが今回の壮挙と関連を持つか否かについては定かではない。しかし記者の私見を述べるならば、この空の金字塔とも言うべき前人未到の飛行展示が各界における空軍支持者たちを勢いづけ、有人航空機全廃という国防省の方針についても、なんらかの反動が生ずるであろうことは想像に難くない──


41年後。1999年夏、ビッギンヒル航空ショー会場;
「これはトップ准将、わざわざのお越し、光栄に存じます」
「トレーシー少佐、気をつかわないでくれたまえ。私はもう退役して随分になるし、御覧のように、最早ただの老いぼれさ。間もなく80歳の声も聞えるなどと思うだけでもゾッとするがね。それにしても、相変わらずそつの無い飛行演技だった。あの赤い機体もなかなか良いじゃないか。たいしたチームに育てたな」
「ありがとうございます。准将の率いられたあのチームには到底及びませんが」
「いやいや、そうでもあるまい。まあ私のチームがそうだったように、第一線の戦闘機こそ君らチームには相応しいのだろうが、可変翼では少し扱いにくかろうとも思う。そこへ行くと、今度のあの新型機は振り回すのにも良さそうじゃないか?」
「我々としても若干不本意な点はありますが、なにぶん単発練習機のほうが燃費もよろしいようでして」
「またしても古い馴染の予算節約か。やれやれ、かわらんな。時に、親父殿は、ジョナサンは息災にしとるかね?今日は姿が見えないようだが」
「はい、実は少し腰を傷めておりますが、お陰様でなんとか。フォークランドで親父の隊はかなり際どいこともありましたから、それに比べれば大抵のことは平気だと言っております」
「なるほど、違いない。また機会を作って、ゆっくり飲もうと伝えてくれ。無論、君も一緒にな」
「はい、親父も喜びます。准将もお元気そうで、さすがは伝説の飛行隊長でいらっしゃいます。エジンバラ〜ロンドン間の飛行速度記録はファントムに破られましたが、あの22機ループはいまだに世界記録のままですし」
「君ら若い者が越えて行かなきゃいかんじゃないか。そうそう、君のチーム、さっきのあの上方開花から次の演技への移行の時だが、3番機が少しばかり──」
「おっと准将、演技へのご指導は少しお待ち下さい。その前に。君、飲み物を持って来てくれないか」
「ほう、これは粋な計らいというヤツか?」
「さあ、どうでしょうか。上のほうにも、なにがしかの礼儀を知るものが居るということで」
「よかろう。さて、何に乾杯するかね?」
「ではまず、女王陛下に」
「我が空軍に」
「戦闘機隊に」
「シドニー・カム卿に」
「実はこの秋に息子が産まれるんですが──」
「なんだと?では『アローズ』の名を持つ誇り高き飛行隊とその勇士達、そしてその家族に、乾杯!」
「乾杯!」


最後になりましたが、キットに関して少しだけ。(^◇^;)

レベル1/72で新発売となった本キット、同社1/32の縮小というだけでなく、よりモールドが繊細に追加されてる箇所もあるようです(驚)。フラップは開いた状態でセット可能。ざっとみてプロポーションはとても良好、脚庫は浅いもののなかなかのモールド、コックピットは計器盤がデカール、シートにはベルトのモールドもあり(これは板鉛で置き換え)、キャノピーはぴったり合います。主翼の接着がイモ付けなので用心すること、今後出るだろうタイプのために一部筋彫が多いので(F.6としては)埋めておくこと(フラップ部等、組説に指示あり)。微細部品(アンテナ板等)あるのでなくさないこと。機首にオモリの内蔵を忘れずに(これも指示あり)。

F.6になると機関砲の砲口/溝部にブロック状のガス散らし?がつきますが、これもちゃんと部品化されてるので、ついてないものと思い込み、真鍮パイプなんか埋め込んでコテコテ工作しかけた私はマヌケでした(涙)。平面と曲面の混ざった形状ゆえ、キットの部品に砲口を開けて接着すればそれが1番。

他に、完成後に写真撮っててよーやく気付いたのは(汗)、主脚が長いんだかして、少し機尾方向が持ち上がり気味ですね。これは両主脚の長さ調整をするか、タイヤを少し削って対処できるかと。

あとはマーキング/デカールが寂しいと思えば、例えばXtradecalやModeldecalの別売りで調達すればヨロシ。今回もXtradecalで指定のP.Latham少佐@隊長(Topp少佐のあとを引き継いだ)機、そのXF506;X用を流用、コード、シリアルと操縦者名、さらに欠けている右舷のユニオンジャックを自作して1958年9月第一週の「その時」の姿を(一部推定で)再現しとります。その機体=XG194;Nと決めるにあたっては、例によってmayonaka卿の多大なる援助を拝領いたしました。あらためて感謝を。m(_ _)m

塗装は、当初、黒の上にクリアのイエローやオレンジを何層も重ねて、暖かみのあるノスタルジック・ブラックの演出をしようとしてはいたのですが(汗)。途中で早くデカールを貼りたくなってクリア仕上げを適当に省略(ここらがマチガイのはじまり)、最後のUVカットクリアも少しかぶり気味なのにコーティングをかけにいって見事にミス@白濁。orz  写真ではそれを拭ってごまかし気味な画像にしております。(^◇^;)

その後、鏡面用コンパウンドでコーティングを剥がし、ツヤツヤではないもののしっとりした黒にして、パネルラインやエッジ等に金色の色鉛筆で軽く化粧をして完成としました。やはり下地がきっちりできてないと、後からのゴマカシは効きませんな(没)。

画像で添えたRAFウイングマークとRAF旗のバッジはクライブドンコレクション製。ベルベット的な黒に細かな泡も美しいギネスは、撮影後ぬるくならないうちに消費。ヽ(゚∀。)ノ

<参考文献>

もちろん全部ちゃんと読んだわけじゃなく(汗)、必要な箇所を拾い集めた本がこのくらいありました、そこから妄想を育てましたですよ、ってな感じでひとつ。(^^;  各書それぞれに、シドニー・カム卿をして「It's my most beautiful aeroplane」と言わしめた機体への賛辞でもあり。

1)HUNTERS : The Hawker Hunters in British Military Service, M. W. Bowman著、SUTTON PUBLISHING社刊、2002  ISBN 0 7509 2935 9
これなくして今回のマーキング選択はなかったろうと言うカラー写真も満載の書。ハンターの誕生から順を追っての体裁で、中にそれぞれ1章を割いてBlack ArrowsとBlue Diamondsについて記載されてるのが嬉しいところ。写真も美麗。ハンターへの愛が満ちている本。

2)HAWKER HUNTER : WARPAINT Series No.8 A. W. HALL著、Hall Park Books社刊  
お馴染みウォーペイントシリーズのハンター本。カラー側面図の数々が、実機写真と相まって「作って作って、塗って塗って」とせがんでくるような気が。(^^;  1/72図面あり。

3)HAWKER HUNTER The Operational Record : R. Jackson著、Airlife社刊、1989  ISBN 1 85310 048 X
機体の開発から各種テスト、そして携わった人々を網羅して実戦配備から輸出型の作戦行動まで記載、そつなくまとめられた好著。ただしカラー写真はカバーのみ。

4)HUNTER SQUADRONS of the royal airforce and fleet air arm : R. L. Ward著、Linewrights社刊、1985   ISBN 0-946958-13-0
ハンターが配備された英空海軍各飛行隊に沿って概説された書。カラー写真は中ほどに集められているもののみながら、他で見られない画像もあって持っていて損はなさそうな本。

5)RAF HUNTERS in GERMANY Front Line Defenders in the Cold War : G. Kipp、R. Lindsay著及び刊、2003 ISBN 0-9544069-0-7
西ドイツで東西対立の真っ正面の空を守る配備についていた英空軍ハンター各隊の横顔。カラーもまじえて当時の写真が紙質のよい仕立てで。たしかにこんな時代があったという本。

6)HAWKER HUNTER Modern Combat Aircraft 15 : R. Jackson著、IAN ALLAN社刊、1982 ISBN 0 7110 1216 4
ハンターの開発/誕生と配備、各タイプと輸出機等、さらりと全て網羅しつつ、巻末には全機のシリアル対応略歴が。これだけでも価値は抜群。

7)ホーカー・ハンター 世界の傑作機No.66;文林堂刊、1997  ISBN 4-89319-063-6
和書、基本のキ。ただし、少なくとも今回やったブラック・アローズに関する記載では一部誤解があるよーですからご用心。

8)週刊エアクラフトNo.30 世界の名機大図鑑ホーカー・ハンター:同朋舎刊、1989
9ページから19ページにかけての特集。構造透視図などお馴染みのわかりやすい解説がヨロシ。輸出型の武装比較等も有益かと。

9)Scale Aviation Modeller International Vol.10, Issue 4 : 2004年4月号、SAM Publications社刊
おなじみの航空模型雑誌での単座型ハンター 特集記事。346ページから353ページにかけて、カラープロファイルや1/48図面を盛っての仕立て。

10)Hawker Hunter : B. Jones著、The Crowood Press社刊、1998、ISBN 1 86126 083 0
ホーカー製機体と戦中のジェット機の流れをさらっと流してハンターの誕生へ、そしてその生涯を網羅して概説した基本的な仕立てのハードカバー。最終章の題が「TAILPIECE」などとしてあるのが粋。

11)Fighting Colors HAWKER HUNTER in Color : R. Robinson著、squadron/signal publications社刊、1986、ISBN 0-89747-181-4
英国機なら「color」じゃなく「colour」でしょ(@mayonaka卿)、ってのはさておき(笑)。ハンター配備の英国空軍各飛行隊ごとの短い解説と、それぞれの所属機カラープロファイル図をざっと並べた仕立て。コックピットやシートもカラー図になっていたり、各飛行隊のモットーが英訳されてたりと結構お役立ち。

12)HAWKER HUNTER in action(No.121) : G. Ashley著、squadron/signal publications社刊、1992 ISBN 0-89747-273-X
タイプ別に追いかけていくので、単座と複座が混ざったり、輸出機も入ったりと多少散漫な印象はあるものの、さすがに老舗のシリーズ本だけあって要所は押さえられておりますね。

13)HAWKER HUNTER F.1/T.66 in Royal Air Force & Foreign Service(ARCO-AIRCAM AVIATION SURIES No.31) : F. K. Mason著、Arco publishing社刊、1971、SBN 668-02311-2
エアカムですね〜、独特の絵本的カラー図ですね〜、郷愁を感じますね〜、写真の見栄えもあまり良くは無いですね〜、でも「お、ここにいたのか」という写真もあるのでした。

14)エアワールド8月号臨時増刊(1986年)J&P No.2、ハンター&電光
この時期に出た日本語概説としては、なかなかのものではと。巻頭の写真ページから29ページまでがハンター記事で、本文は藤田勝啓さん。


(2005年6月20日初出)


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